電車の中で出会った車イスに乗った青年の話。凍りついた車内で僕がとった行動は…。

ある日の朝、僕は会社に行くために駅で電車を待っていた。事故の影響で遅れて到着した電車の最後尾の車両に飛び乗ると、車内はいつもよりも混んでいた。

周りには通勤途中のサラリーマンや通学途中の高校生たち。そして、その中に一人、車イスに乗った青年がいた。

車内は混んでいたため、僕は車イスの青年の横に立った。

電車に乗ると、僕はなんとも言えない張り詰めた緊張感を感じた。普段よりも乗客が多いのに静寂に包まれた車内の空気。

（なんだろう、この異様な雰囲気は…。）

しばらくすると、車イスの青年は電車の壁に素手で何発もパンチをしていた。社会に対する不満を大声で叫びながら。張り詰めていた空気の原因はこれだったのだ。

僕も一瞬、何が起こったのかわからなかったが、やがて冷静さを取り戻しその状況を眺めていた。周囲から冷たい視線が送られているのを感じながら。

そのまま約５分が経過した。

次の駅に着くと、その車イスの青年は電車を降りようとしていた。しかし、方向転換ができずに下車に手間取っていた。しばらく無情な時間が流れる…。

僕はその青年に声を掛けた。「お兄さん、ここで降りるの？」

するとその青年は「あっ、はい。」と静かに答えた。

僕は車イスを押して方向転換をし、扉の前で待っていた駅員さんにその車イスの青年を引き渡した。

車内の緊迫感は解放された。

電車の壁に素手で何発もパンチをしながら、大声で叫んでいたこの車イスの青年。みんなは怖かったかもしれないけれど、僕は知っている。この青年が怖くないということを。

だって、最後にこう言ってくれたから。

「ありがとうございます。」

世の中にはいろいろな人がいる

最近、僕は意識していろいろな人を見るようにしている。するといろいろな人がいることに気付く。

駅のホームでブツブツ独り言をつぶやいている青年。駅のホームで空手のような動きをしている中年男性。白い杖を持った女性。

以前の僕はこんな人たちを見ると一歩引いてしまっていた。何か変に意識してしまうからだ。

でも今は違う。何も特に意識することはなくなった。ありのままを受け入れられるようになったからだ。

ありのままの自分を受け入れ、ありのままの他人を受け入れる。いつしか、そんな考えになるようになった。

NHK EテレのハートネットTV

僕の世界観を変えてくれたテレビ番組がある。NHK Eテレの「ハートネットTV」だ。ハートネットTVはNHKのホームページで以下のように説明されている。

「生きづらさ」を抱える全ての人に向けた新しいスタイルの福祉番組

引用元：http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/index.html

障害を持った人、病気で介護が必要な人、災害で困難に直面している人など、社会が抱える課題に前向きな視点で進行するのがこの番組の特徴。

毎回、重いテーマでありながらも心温まる感覚になるのは、「人は支え合って生きている」という当たり前だけど普段は意識していないことが、僕の心にストレートに飛び込んでくるからだ。

そして、テレビの画面を通していろいろな人々を知ると、誰一人として同じ人はいないことに気付く。当たり前のことだけど。

優しい人、怖い人、障害がある人、髪の毛の色や肌の色が自分と違う人、性的趣向が自分と違う人…。みんな個性だ。

毎週のようにハートネットTVを見ていると、いつの間にか自分の心に変化が生まれ、いろいろな価値観を自然と受け入れられるようになってきた。

ただ、やっぱり苦手な人はいる。

自分にとって重要なのはその人と波長が合うかどうか。波長が合えば一緒にいて楽しいし、波長が合わなければ不協和音でムズムズした気持ちになる。

波長が合えば一緒にいたいし、波長が合わなければ距離をおきたい。

好き嫌いではなく、人それぞれが持っている心の波長の問題だ。

ハートネットTVを通してそんなことを考えるようになった。奥が深い番組だ。

ちなみに、ハートネットTVの中にもいくつかのテーマがある。僕が一番好きでほとんど毎週見ているのが毎週月曜日の「ブレイクスルー」だ。

毎週月曜日のハートネットTVでお送りする企画「ブレイクスルー」。
困難や絶望的な状況に直面しながらも、その壁を破り前に進もうとする人たちを見つめることで、“新しい幸せ、生き方”を探ります。
障害や病気、貧困など様々な“生きづらさ”を抱える主人公たちをドキュメントVTRで徹底取材、さらにスタジオでは、風間俊介さんとAIさんが、ゲスト（主人公）とのトークから、困難と付き合い生き抜くための知恵やヒントを探ります。
出演者：風間 俊介さん（俳優）、AIさん（アーティスト）

引用元：http://www.nhk.or.jp/heart-net/tv/series/breakthrough.html

俳優の風間さんやアーティストのAIさんの絶妙なトークもまたこの番組の特徴。見ると毎回温かい気持ちになれるので、週初めの仕事で疲れた心を癒すには最適な番組だ。

まとめ

2018年の冬のパラリンピックで日本勢が大活躍している。障害があってもみんな生き生きとしている。笑顔が素敵だ。

自分のおかれた環境に悲観するのではなく、そこで自分ができることをやればいい。

自分の人生は人のせいにしても変わらない。自分の人生は自分にしか変えられない。嫌だったら逃げてもいい。好きだったら追いかければいい。

他人に批判されても、自分の幸せは自分でしか得られない。だったら自分らしく生きよう。そして、いつも笑顔でいよう。

そんな前向きの人には自然と同じ波長を持つ仲間が集まってくるものだ。

「自分らしく生きよう。そして、いつも笑顔でいよう。」